PROJECT 1 埼玉県深谷市で行うまちづくり推進事業

【前編】地域に根ざした実業づくりとまちづくりビジョンの可視化

CHAPTER 1
バンブックは埼玉県深谷市とともにさまざまな取り組みを行ってきました。その土台には地域に根差した3つの事業があります。

CASE1|深谷市を代表する道の駅の一つ、「道の駅はなぞの」全面リニューアル事業

深谷市とバンブックの取り組みのきっかけとなったのは、1998年に設立された「道の駅はなぞの」です。本駅は全国の道の駅事業のモデルケースとして設立されましたが、2017年に20周年を迎えるにあたり、施設の老朽化や来場者の減少、顧客満足の低下などの課題を抱えていました。
その課題の解決と新たな時代の道の駅のモデルケースとなることを目指し、リニューアルプロデュースを行いました。バンブックの担当領域はリニューアルコンセプトと基本計画の策定業務からスタートし、外部パートナーの建築士事務所とともに内外装の全面リニューアルにおけるクリエイティブディレクションを実施。新たな商品選定からVMDなどの店内装飾全般のコーディネート及び、テナント出店誘致、オリジナル商品の開発までフルサポートしました。
リニューアルにあたって重視したのは、元来、道の駅の目的と機能とされている「休憩機能」「情報発信機能」「地域連携機能」に加えて、「新たな雇用の創出」「関係人口増加施策への寄与」「地域ブランディングに貢献」というテーマです。魅力的な商品や特産品を取り揃え、時代に合ったデザインへと更新することで、今まで以上に深谷の魅力が伝わる道の駅に。リニューアル後は大幅な来場利用者増、売上などの改善に貢献しました。

CASE2|FARMY CAFÉ 深谷市に根ざした地域コミュニティの運営

深谷市はコンテナを活用し、地域コミュニケーションの活性化を狙いイベントなどを行う「深谷ベース」を運営していました。この事業をクローズし、コンテナの移設と新たな活用方法を模索している中、バンブックではコンテナを使ったカフェの開業を深谷市に提案。深谷市の地域産業のコアである農業を活かし、「深谷の野菜を召し上がれ」というコンセプトを掲げ、2019年に道の駅はなぞの内で地産地消を推進するカフェ「FARMY CAFÉ」をプロデュースしました。本事業は道の駅はなぞののリニューアルプロデュース2周年事業であるとともに、道の駅はなぞのリニューアル後、「飲食サービスへのニーズの高まり」「地域の食や地域産業の情報発信機能の強化」など新たに見えてきた課題に対する解決施策でもありました。
バンブックは、飲食事業の事業計画書の策定、店舗名称の提案、CI・VI、内外装ディレクション、メニュー開発、オペレーション計画に至るまで、開業に向けた事業プランニング全般を担当。さらに、開業を目的としたコンサルティングやプロデュースにとどまることなく、2019年の開業から現在に至るまでFARMY CAFÉの店舗運営を受託し、地域に根ざした実業を行っています。バンブックは遡ること2017年から「恵比寿コンテナ」(現・The HOLIDAY LOUNGE)というコンテナを使った飲食事業を自社で行っており、FARMY CAFÉのプロデュースにもそのノウハウが活かされています。店舗では地元の生産者と協力しておいしい食材を提供することで、深谷の魅力を発信するための一助を担うだけでなく、地域経済の活性化や雇用の創出にも貢献。一度役目を終えたコンテナが、新たな地域コミュニティへと生まれ変わりました。

CASE3|NOLA 深谷市道の駅おかべ内の大型ビュッフェの総合プロデュース

これまでの深谷市での実績及び、さまざまな施設や飲食店のプロデュース・自社コミュニティ事業を行ってきた知見を活かし、道の駅おかべ内にオープンした「NOLA 深谷のめぐみ食堂」の総合プロデュースを2021年に行いました。地元の手づくりの野菜やお肉、お米などを使用したビュッフェスタイルのレストハウスです。 バンブックの担当領域は、コンセプトプランニング・事業計画の策定、店舗名称決定、CI・VI、メニュー開発、オペレーション、内外装デザインの監修・アートディレクションなど多岐にわたります。
観光客が多い道の駅はなぞのに対して、県北に位置する道の駅おかべは地元の人たちが集う場所でした。今回のプロジェクトでは地元の人から愛され多くの方に来場してもらうとともに、新たな観光回遊を県北エリアでも促進し、さらに広い観点で深谷市内の地域経済の振興を活性化させるため、新たな観光ランドマークとしてNOLAを機能させる必要がありました。おかべエリアは渋沢栄一記念館をはじめ、まだ知られていない多くの観光スポットもある地域。はなぞのエリアだけでなくおかべエリアにも多くの人が集まる目的地としてNOLAが機能するよう願い、開業をサポートしました。
CHAPTER 2
農業を核とした産業ブランディング推進事業「儲かる農業都市ふかや」の 実現に向けた3つの取り組みをキーパーソンに聞きました。
バンブックが深谷市のさまざまな実業に携わるのと並行して、深谷市では大きなまちづくり施策が動き出していました。2022年10月のふかや花園プレミアム・アウトレットのオープンなどに向けた大型まちづくり開発事業である「花園IC拠点整備プロジェクト」です。このプロジェクトについて、主導する深谷市役所 産業振興部 産業ブランド推進室の福嶋隆宏さんは次のように話します。 「アウトレットがオープンすると年間約650万人が深谷市に来ると予想されているので、大きなプロジェクトですし、大きなチャンスでもあります。深谷市はもともと観光地ではなかったのですが、全国的に人口が減少していくなかで、人を呼び込むことが大事になってくる。ハードルの高い取り組みですが、このチャンスを生かしたいと考えました」 産業ブランディング推進室では「農業を核とした産業ブランディング ~『儲かる農業都市ふかや』の実現~」という目標を掲げており、そのための主要な実行施策として「野菜を楽しめるまちづくり戦略」と「アグリテック集積戦略」を策定しました。
「農業を核とした産業ブランディング ~『儲かる農業都市ふかや』の実現~」という目標に対して、バンブックは深谷市とともに「野菜を楽しめるまちづくり事業戦略書」を作ることになります。
CHAPTER 3
人を呼び込むための取り組み(野菜を楽しめるまちづくり)をどのように実行していくか。 ぶれないヴィジョンを示し、その手法をまとめたマスターデータを作成しました。
深谷市とバンブックは、深谷市を「ベジタブルテーマパーク深谷」と名付けて、「野菜を楽しめるまちづくり事業戦略書」を立案しました。深谷のまち全体を野菜が楽しめるテーマパークに見立てて、深谷市の観光地化を目指すまちづくり戦略です。この戦略書について、福嶋さんは次のように話します。 「そもそもなぜ戦略書を作ったのかというと、ぶれないビジョンを示すためです。プロジェクトにはさまざまなステークホルダーが関わっていますし、スパンも長いので、方針がぶれていく可能性がある。『私たちはこういうことを実現したいんだ』という、貫かなければいけない考え方を示すために戦略書をつくったのです。口頭で伝えるだけでは流れていってしまうので、形にしておくことが重要だと思いました」
深谷市の抱える課題として挙げられるのは、社会構造の変化に伴う地域経済の衰微です。人口の自然減、地域人口の社会減などによる社会課題を解決する必要があり、そのためには地域産業である観光を促進し、交流人口を増やすことが重要になります。深谷市の観光における強みは、都心から訪れやすい距離感と、季節ごとの旬を味わえる野菜。その2点を活かして“何度も訪れたくなるまち”を目指し、市内回遊を促進するコンテンツづくりを行うというテーマを戦略書内で掲げました。
花園IC拠点整備プロジェクトを契機に、2022年にあるべき姿を考え、逆算して今すべきことを明文化した「野菜を楽しめるまちづくり事業戦略書」。拠点整備プロジェクトによって深谷市は多くの人が訪れるまちとなりますが、本当の意味での地域経済の振興に寄与するためには、主要観光拠点をきっかけに深谷の魅力を知り、花園エリア以外の市内回遊観光に結びつけることが欠かせません。戦略の策定はあくまでも目的達成のための手段であり、ここから深谷市とバンブックは、戦略書の内容を実行するフェーズへ移行していきます。